「ステンレスとは?」スクラップ屋目線で解説!

「ステンレスとは?」スクラップ屋目線で解説!

東大阪のスクラップ屋、古谷商店です(^▽^)

今回のブログでは、奥が深いステンレススクラップの世界を掘り下げて行きたいと思います☆

ステンレスといえば、私達の身の回りに溢れている代表的な金属で、鉄よりも価値が高い金属で知られています。
ところが、「ステンレスと思ってスクラップ屋さんに売りに行ったのに、鉄並の値段しかつかなくてがっかりしたことがある・・・」なんて声をお客様からもよく聞きます。
 

それには「ステンレス」という言葉の奥に潜むちゃんとした理由があります。
日頃のお問い合わせの中でもステンレスに関するものは非常に多いので、そんなみなさんの疑問に答えられるよう、書いていきたいと思います(^ー^)
 

まずは私達が「ステンレス」と呼んでいる金属は、一体なんなのか?というところからみていきましょう!
 

  そもそもステンレスとは?

ステンレスという言葉は英語で書くと【Stainless】となり、【stain】(汚れ、シミ)と【less】(少ない)から、錆びにくい、汚れにくい金属という意味を持っています。
 

ということで、ステンレスという金属は鉄にクロム(Cr)を13%以上配合させた錆びにくい合金の総称ということになっています。
正式にはステンレススチールと呼ぶので、鉄の仲間だけど錆びにくい鉄ってことですね(^ー^)
 

身近な所でいうと、スプーンやフォークなんかの食器に多いので、写真のようにスプーンの裏に「STAINLESS STEEL」と刻印があったりします☆
 

「ステンレスとは?」スクラップ屋目線で解説!
 

先ほど「総称」という風に書きましたが、このステンレスの部類に入る合金の種類は本当にたくさんあります。
鉄に混ぜる他の金属の量で強度、耐熱性、耐食性、耐摩耗性などが変わってきますので、用途によって色んな配合があり、全部ひっくるめて「ステンレス」なのです☆
 

とはいうものの、ステンレスの仲間も大きく二種類に分けることができます。
 

その二種類の違いとは、レアメタルと呼ばれる希少金属ニッケル(Ni)を含んでいるか、いないかという差になります。

 

  オーステナイト系?フェライト系?、スクラップの価値もここが境目!

ここで登場するニッケルという金属。
レアメタルと呼ばれる希少金属で、金属の中でも高価な原料になります。
 

ステンレス自体はクロムを13%以上含んでいるもののことですが、さらにそこにニッケルを加えたものの事を「オーステナイト系ステンレス」と呼びます。
逆にニッケルを加えていないものを「フェライト系ステンレス」と呼び、ステンレスはこの二種類に大きく分類できるのです。
(※厳密にいうとJIS規格では5種類に分かれますが、ここではザックリ分類させていただきました。)
 

オーステナイト系?フェライト系?、スクラップの価値もここが境目!
 

ここまでくると想像がつくかと思いますが、高価なニッケルを含んでいるステンレスが高く、含んでいないステンレスは安いということになります。
同じステンレスと言えども、どちらに分類されるかによってスクラップ的な価値も全然違うものになってしまうのです。(^ー^)
 

そのため、「ステンレス=高く買ってもらえる」と思っていても、売りに行ったステンレスがニッケルを含んでいないものだった場合、期待はずれの買取単価ということが起こりうるのです(^ー^;)
 

JISの規格でも、この2種類は明確に分類されています。
JISの略称ではステンレスのことを[SUS]と表記しますので、ニッケルを含んでいるものは[SUS300番台]で表され、ニッケルを含まないのもは[SUS400番台]で表します。
 

ちょうど弊社のヤードにあるステンレスの中に分かりやすいものがあったので、写真をのせておきます⬇

「ステンレスとは?」スクラップ屋目線で解説!
「ステンレスとは?」スクラップ屋目線で解説!
 

写真はどちらも「SUS304」と書いてありますよね?
ということはニッケルを含むステンレスなのですが、この「SUS304」という規格が、世界で一番多く使われている300番台のステンレスになります。
 

「SUS304」の成分は、18%のクロム、8%のニッケル、残りが鉄、という構成になるので、通称「18-8 ステンレス」と呼んだりします。
ちょうど、「18-8」の刻印があるスプーンが会社の食器棚にあったので写真でみてみましょう(^▽^)
 

18-8ステンレス

 

つまりこれは、ニッケルを含むSUS304ステンレスで作られているということになりますね☆
 

ニッケルの含有量が増えるほど、熱にも錆にも強くなっていくので、「18-10」や「18-12」という刻印のものあります。
ニッケルが多いほど高級品と言えますね☆
 

偶然ですが会社にも「18-10」の高級スプーンがありました(^ー^)
 

18-10ステンレス

 

ちょっとまとめてみるとこんな感じ⬇
 

  • 【スクラップの価値が高い】
    ニッケルを含むオーステナイト系で、JIS規格のSUS300番台。
    最も代表的なものが「SUS304」で、「18-8 ステンレス」とも呼ばれるもの。
  •  

  • 【スクラップの価値が低い】
    ニッケルを含まないフェライト系で、JIS規格のSUS400番台。

 

ニッケルの含有量によって価格が決まるステンレス。
つまりステンレスの価格はニッケルの相場に大きな影響を受けて上下します(^ー^)
 

かなり長くなりましたが、ここまでは私達の生活に欠かせないステンレス君の正体について解説してきました。
しかし、ここからが重要です☆
 

「じゃあ、どうやってニッケルが入っているのか見分けるんだ?」
っと思った方も多いのではないでしょうか?(^ー^;)
 

正確に判別するには分析器に当てる必要がありますが、
次のコーナーでは見分け方についても書いて行きたいと思います。(^▽^)

 

  SUS300番台とSUS400番台の判別、キーワードは「磁性」?

SUS300番台のステンレスと、400番台のステンレス。
先ほど紹介したスプーンの様に、「18-8」などの刻印があれば一発で判別できるのですが、全てのものに刻印があるわけではありません。
 

見た目での判別は非常に難しいですが、実は「磁性」の部分で大きく特徴が違います。
 

ニッケルを含むSUS300番台のステンレスは磁石を近づけてもつきません。(厳密には磁性が弱い)
ニッケルを含まないSUS400番台のステンレスは、鉄と同じように磁石がビタっと強くつきます。

 

この「磁性」の有無で、ある程度判別することができるのです☆(^ー^)
ですので、ステンレスのお問い合わせがあった時には、必ず「磁石はつきますか?」という確認をしています。
 

基本的には磁石がつかないSUS300番台のステンレスですが、ビスやネジ、バネなどの形状のものは、製造工程の中で若干の磁性を帯びることがあります。
また、300番台でもSUS316やSUS310のようなニッケルの含有量が多めのステンレスや、SUS301のようなニッケルの含有量が低めのものには若干の磁性がありますのでその点は注意が必要です☆(^▽^)
 

この「磁性」、、本当に不思議なのですが、ステンレスの原料である鉄もクロムもニッケルも全て強い磁性を持つ金属なのに、特定の分量で混ぜると「磁性」が無くなるんですよね・・・(^ー^;)
 

「磁性」を確認することが、誰でもできる一番簡単で確実な方法ということになるのですが、それには他にも理由があります。
先ほどは刻印があれば簡単に判別できると書いたものの、稀ですが刻印もあてにならない場合があるからです。
 

先ほど、「18-8」という刻印があるスプーンの写真を紹介しましたが、「18-8」(SUS304)であれば磁石はつかないはずが・・・・⬇

18-8ステンなのに磁石が着く?

 

見事に磁石がついちゃってます・・・・(^ー^;)
 

これはプレスでスプーンの形に打ち抜くときの刻印は「18-8」(SUS304)なのに、実際に打ち抜いている材料はニッケルを全く含んでいないSUS400番台を使っているからだと思われます・・・・本当はこんなことあってはならない事なんですけどね・・・・(^ー^;)
(※プレスなどの加工過程において磁性を帯びる場合もございます)
 

滅多にないとは言うものの、こんなこともあるのでやっぱり磁石をつけて確認する必要があります。
 

磁石がつかないステンレス=高い
磁石がつくステンレス=安い

 
例外もあるとは言うものの、これが一般的なステンレスの基本的な考え方ですので、覚えておくと便利です☆

 

  スクラップ業界としてのステンレスの呼び分けとは?

ここでスクラップ業界の中でのステンレスの呼び分けについて最後に書いておきたいと思います。
 

いままで見てきたように、ステンレスと言ってもニッケルを含むか含まないかでスクラップの価値も大きく変わってしまいます。
ニッケルを含んでいてもいなくてもクロムが13%以上入っていればステンレスなのですが、それでは価値が高いものなのか低いものなのかわかりづらくなってしまいます。
 

そこで、私達スクラップ業界では
SUS300番台のステンレスのことを「ステン」と呼び、SUS400番台のステンレスのことを「クロム」と呼び分けています。
 

ですので、一般的にスクラップ屋が言う「ステン」とはSUS300番台のステンレスのことを指しているのです☆(^▽^)
 


今日のお話はここまでです。
本当はもっと簡潔に書こうと思っていたのですが、書き始めるとアレもコレもと書かないといけないことが出てきて長くなってしまいました・・・。
 

古谷商店ではそんなステンレススクラップを買取して金属原料としてリサイクルしています。
ステンレスの廃棄処分をお考えの方はお気軽にご相談下さい(^▽^)
 

また、記事が気に入っていただけましたら下のSNSボタンでポチっと拡散をお願いいたします!
 

最後まで読んでいただきありがとうございます☆

LINEで送る
Pocket

「ステンレスとは?」スクラップ屋目線で解説!” に対して2件のコメントがあります。

  1. 佐藤 より:

    初めまして。都立の工業高校で教員をしている者です。
    ステンレスに関して実にわかりやすい説明がしてあり、大変参考になりました。
    実は説明の中で、18-8ステンレスに磁石が付くという写真がありましたが、それは加工法に問題があったのではないかと思いました。冷間加工で最後にプレスして先端部を変形させると、塑性加工の変形によって組織が変化し磁性体になることがあります。文献にも調べてみると説明がありました。
    25年ほど前に、偶然にも手元にあるスプーンの中で発見したのですが、先端は磁石が付くのに持ち手の部分は磁石が付かない製品を持っています。授業で見本として使っているのですが、クロム-ニッケル系のステンレスでも加工の仕方によって変形後に磁性を生じることがあると言うことです。

    1. e-furutani より:

      佐藤様
      コメントありがとうございます☆
      ご指摘頂いた件ですが、おっしゃるとおり、加工工程の中で磁性を帯びる場合がありますので、磁石が付くというだけでニッケルが含有していないという判断を下すのは少々丁寧さに欠ける解説だったと反省もしております。

      手元に刻印のある見本がスプーン類しかなかったので例として採用したわけですが、過去実際にあったケースでは日本国内で18-8ステンレスをプレスしていた金型をそのまま海外に持っていって別の材料をプレスした粗悪品も結構出回ってたりしますので、刻印と実施の素材が一致しないパターンも実在します・・・・(あってはならないことなんですけどね・・・)
      こういった例はプラスチック成形品にもあって、金型に刻まれた耐熱温度と実施の樹脂の耐熱温度が違うということもあったりします・・・・

      今回のご指摘に関しては本文中に補足を入れる形で修正させていただきます☆
      ご指摘、感謝いたします!

佐藤 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です